リチウムイオン電池の危険物の分類について
リチウムイオン電池は消防法上で第四類第二石油類となります。
消防法で危険物とは、別表第1の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものとなっています。
消防法<別表第1>等に定められている危険物
「指定数量」は危険物の規制に関する政令<別表題3>
種別 | 品名 (*は政令で定める物質) | 性質 | 指定数量 | 該当物質の例 | |
---|---|---|---|---|---|
第1類 |
|
酸 化 性 個 体 |
第1種酸化性個体 | 50kg | 過酸化バリウム |
第2種酸化性個体 | 300kg | トリクロロイソシアヌル酸 | |||
第3種酸化性個体 | 1,000kg | 硝酸アンモニウム 硝酸カリウム 硝酸ストロンチウム |
|||
第2類 | 1. 硫化りん | 可 燃 性 固 体 |
100kg | ||
2. 赤りん | 100kg | ||||
3. 硫黄 | 100kg | ||||
4. 鉄粉 | 500kg | ||||
|
第1種可燃性固体 | 500kg | マグネシウム粉(150メッシュパス) | ||
第2種可燃性固体 | 500kg | マグネシウム粉(80~100メッシュパス) | |||
9. 引火性個体 | 1,000kg | 固形アルコール | |||
第3類 | 1. カリウム | 自 然 発 火 性 物 質 及 び 禁 水 性 物 質 |
10kg | ||
2. ナトリウム | 10kg | ||||
3. アルキルアルミニウム | 10kg | ||||
4. アルキルリチウム | 10kg | ||||
5. 黄リン | 20kg | ||||
|
第1種自然発火性物質及び禁水性物質 | 10kg | リチウム粉 | ||
第2種自然発火性物質及び禁水性物質 | 50kg | 水素化リチウム、ジエチル亜鉛 | |||
第3種自然発火性物質及び禁水性物質 | 300kg | ||||
第4類 | 1. 特殊引火物 | 引 火 性 液 体 |
50リットル | ジエチルエーテル、アセドアルデヒド | |
2. 第1石油類 | 非水溶性液体 | 200リットル | ガソリン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン | ||
水溶性液体 | 400リットル | アセトン、ビリジン | |||
3. アルコール類 | 10kg | メチルアルコール、エチルアルコール | |||
4. 第2石油類 | 非水溶性液体 | 1,000リットル | 灯油、軽油、キシレン | ||
水溶性液体 | 2,000リットル | 酢酸、ギ酸イソアミル | |||
5. 第3石油類 | 非水溶性液体 | 2,000リットル | 重油、クレゾール、アニリン | ||
水溶性液体 | 4,000リットル | グリセリン、酢酸 | |||
6. 第4石油類 | 6,000リットル | ギヤー油、シリンダー油 | |||
7. 動植物油類 | 10,000リットル | パーム油、アマニ油、ヤシ油 | |||
第5類 |
|
自 己 反 応 性 物 質 |
第1種自己反応性物質 | 10kg | アジ化ナトリウム 過酸化ベンゾイル 硝酸イソソルビド |
第2種自己反応性物質 | 100kg | ニトロメタン 硫酸ヒドラジン カルボヒドラジド |
|||
第6種 |
|
酸 化 性 液 体 |
300kg |
この中で混合液のリチウムイオン電池の電解液の引火点は40℃程度となりますので、1気圧において引火点が21℃以上70℃未満のものと規定されている第四類(引火性液体)第二石油類に該当します。
危険物の規制に関する政令で第四類第二石油類の非水溶性の指定数量は1000リットルと規定されていて、リチウムイオン電池の電解液の総量が指定数量以上となる場合、貯蔵は危険物屋内貯蔵所にて行う必要があります。
リチウムイオン電池の性能から見た保管について
リチウムイオン電池の多くは単電池ではなく組電池として使われています。
組電池の場合は組み合わされる単電池の管理を適切に行わないと性能を発揮できないそうです。
たとえば3個の単電池にて組電池が出来ている場合、このうち1個の単電池の自己放電量が多くなっていた場合、この組電池を放電させると自己放電量が多い単電池は他の単電池よりも早く放電終了となってしまいます。
100%充電されているAとBと50%しか充電されていないCをこの状態で組電池とした場合。
Cは放電を完了しましたが、AとBはまだ50%残っています。セル全体としての放電は終了となります。
再び使用するために充電しますが、A、Bが100%になれば過充電とならない様に停止します。
Cは50%しか充電されていません。
過放電状態になりますと発煙や発火に至る危険性があるため、他の単電池にエネルギーが残っていても放電が終了となります。
充電に関してもエネルギーが残っていた単電池の充電が完了しますと、過充電にならないために充電が終了となります。
自己放電量が多かった単電池は当然完全に充電されない状態で充電が終了となります。
組電池の場合、単電池の自己放電量にばらつきがありますと、充電時や放電時に組電池の性能をフルに発揮することができなくなってしまいます。
そのためリチウムイオン電池の組電池を作成する際に、組電池の性能と安全性のため単電池のばらつきを抑えることが重要となります。
単電池の自己放電量のばらつきには個体差と共に環境温度が関係していると言われます。
危険物屋内貯蔵所には気温などによって変化する温度帯の常温にて保管する施設と、年中一定の温度帯の定温にて保管する施設があります。
こちらが当社の定温室の温度推移の表ですが、20℃±5℃にて管理している部屋のものです。
リチウムイオン電池保管のための定温設備
屋外機について
定温倉庫内の気温を一定に保つための機器のヒートポンプ方式の屋外機が各部屋に2台以上設置されており、故障などにより1台が停止した場合でも温度を保つことができる設備となっております。
温度コントロールパネル
定温室の温度設定はコントロールパネルにより、保管する危険物に適した温度に設定されています。
設定された倉庫内温度の状況はデータロガーにより送られ常時監視されています。
屋内機
屋内には屋外機からの冷媒により倉庫内の温度を保つための屋外機が設置されていて、こちらから吹き出す冷気または暖気により温度をコントロールしています。
定温移動ラック室
255m²と271m²、544m²の定温移動ラック室は従来の部屋よりも広く、天井高も2m程高いことにより、倉庫内の温度を均一にするための撹拌装置も設置されています。
撹拌装置により定温室内の上部と下部による温度の差を少なくしています。
定温室には保温設備として天井が設置されております。
常温移動ラック室
常温移動ラック室には保温設備としての天井や断熱材を設けていません。
日中の太陽光による温度上昇影響がある屋根も消防法に基づいた金属板による構造となっています。
また空調設備も設置されていませんので、常温移動ラック室の保管温度は気温の変化による外気温とほぼ同じとなります。
そのため常温移動ラック室での保管は温度管理を行っていません。